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437 はじめまして、娑カさん。
まず、金属を入れるということ自体、腰椎の不安定さに対する治療で、
ヘルニアの治療を越えたものです。
菌が一箇所にまとまって「膿が溜まった状態」は、まだ菌に対して体の抵抗力が
優位で戦っている状態ですが、抵抗力が無くなっていると、敗血症と言って体中を
菌がかけめぐる状態になり、死亡する危険が高くなります。
どんな手術でも感染は一定の確率で起こるものですが、糖尿病では「細菌への抵抗力が
落ちる」のと「末梢血管の血行が悪くなる」のが最大の問題です。
些細なこと(例えば、指のささくれとか膀胱炎、扁桃炎)がきっかけであっても、
手足の切断や敗血症にまでなり、最悪死亡ということもあり得ます。
MRSAというのは常在菌で皮膚や鼻の中などに普通に存在する菌で、特別毒性が強いわけ
ではありません。健康な人で菌を持っていても問題になりませんが、抵抗力のない
お年寄りや腎、肝に問題がある人、糖尿病など免疫能力の落ちた人では、どんな菌であれ
命に関わる可能性はあるのです。
糖尿病がどのくらいコントロールできるかで半分以上決まり、残り半分は局所の血行で
決まると思います。昔、結核という病気が治りにくかったのは、結核は一種類の薬
だけでは効かない、結核の病巣は血行が悪いという二つの要因からでしたがが、
糖尿病の方は丁度それと同じ二つの弱点を始めから持っているわけです。
局所の感染が根絶できるかは、体力(免疫能力)と局所の状態(血行)で決まるのです。
(MRSAは根絶できるか?という質問は、常在菌である以上意味がありません。人は細菌と
共に生きているものなので、治っても体表、鼻、気道の菌は無くならないのです)
私が診ていたMRSAによる化膿性関節炎を起こしたお年寄りは、半年がかりでようやく
完治に至り、先月退院しました。その方も検査上は菌は陰性で、健康と言える状態まで
回復しましたが、膀胱か気道にMRSAはきっといるはずです。
「金属を入れたまま治療をするか、抜くか」等の患部の治療は患者さん毎の状況判断で、
糖尿の治療や体調の調整等すべてのバランスとタイミングを取って決めるものなので、
一般論では是非の判断はできません。一番多くの情報を持って状況を見ながら総合判断の
できる整形外科医が主治医となって、内科医の助言と協力を取りながら治療にあたるのが
ベストの方法でしょう。二回以上の手術を要する可能性が高く、
上手くいっても根気のいる長期戦の治療となることが予想されます。