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55 みさとさん
そんなこんなで疲れ捲くりの古都旅行の3日目。 嵐山辺りでレンタサイクルを借りてグルリと日がな一日走り回って、既に二人の疲労は限界を超えてしまっていた。 そろそろ夕闇の迫る蒸し暑い時間に、私達はバスでホテルまでの帰路に付いていた。 観光の季節にはちょっと時期がずれていたせいか、有名な寺などには修学旅行の学生がゾロゾロといたけれど、さすがに夕刻の時間帯の市内を運行しているバスには人影はまばらだった。 座席に座って間もなくすると、押さえきれないような睡魔に襲われいつしか私はすっかりと熟睡をしてしまったらしい。 どの位の時間が経ってからだろうか、バスは明りの無い淋しい街中を走っていたのだった。 確かこのバスは主要幹線道路だけを通って駅まで行くバスだった筈なのに、どうしてこんな寂れた場所をはしっているんだろう。 眠気にぼーぼーとしている頭でウツラウツラと考えていた。 彼女は完璧に寝崩れた状態で私のお腹の辺りに頭を垂らし、ヨダレを垂らさん勢いで口を開けて眠りコケていた。 やがてバスは、誰も待つ人のいない薄暗いバス停に停車して乗降口を開けたのだった。 その時に、ふと気が付いてバスの中を見渡したら、このバスに乗っている乗客は私達二人だけだったのだった。 このバスは、いったい何の為に、乗る人のいないバス停に停車をして、乗降口を開いているのだろう? 私は言い知れない不安感に襲われ、阿呆面をさらして眠りこけている彼女を揺り起こした。 よせば良いのに、なまじ中途半端な化粧をしていた彼女は、一日の疲れと変な体勢で眠っていたせいで、ほとんどバけタヌキのような顔をして目を開けた。 やがて、バスは誰も乗せる事無く、勿論誰も降りる事も無く発進をしてしまったのだった。 私は眠さと疲れで現状が把握できないでいる彼女の頬を両手ではさみ、しっかりと目を覚ましてくれと揺り動かして、今起きているこの状況を説明したのだった。 寝ボケ捲くっていた彼女も少しの時間は掛かったのだが、周りの寂しさと私の真剣な眼差しに状況が飲み込めたらしく、辺りを見回し、窓の外の景色を確認し始めたのだった。 「このバスは、いったい何処を走っているの?」「そんな事を俺に聞くなよ」 そうしている内にバスは、また再び暗く淋しい場所を選んで置かれているとしか思いようの無い所に置かれたバス停留所に停車したのだった。 「ねえ、運転手さんは、なんでこんな誰もいないバス停に止まっているの?」 乗降用のドアーが開けられ暫らく停車している。 「いったい?」又再び言い知れない不安に襲われ、私は彼女の肩を抱き寄せた。 窓の外はすっかりと日が落ちた夕闇で、窓ガラスには抱き合っている私達の姿が映し出されていたのだったが、・・ふっと視線をずらしてみると、
そこには、数人の乗客が座席に座っている姿がはっきりと映っていたのだった。 そして開いている乗降口から吹き込んでくる風の中には、ほんのりと菊の匂いが漂ってきていていたのだった。 そう、窓ガラスに映っている乗客のほとんどの人達は、皆手に手に白い菊の花束を抱え、黒く飾気の無い服装をしているのでした。 彼女はその光景を目にすると、そのまま目を閉じ私の背中に手を回して、得意技の般若心経を唱え始めたのでした。 私も不安と恐怖に耐え切れずに彼女の頭を抱えなら静かに目を閉じて、現実の社会に戻れる事だけを願い続けていました。 どの位の時間が過ぎたのかは、解かりませんが、車内の菊の匂いが薄れ、何時の間にかバスの外から、けたたましいクラクションの音や、盲人用の信号機の音楽が聞こえ出して、私達は賑やかな都会の中の渋滞の真っ只中に引き戻されていました。 すっかりと、通勤客で混み合いだしていた車内には、何故か不自然な位アツアツのカップルが不埒にも抱き合っている姿がありました。 じゃんじゃん。
もちろん、ウソですよ ウソ。 信じられないような、本当のウソっぱち。
私って、スゴイ? ねえねえスゴイ?
これが又、発想はどんどんと出て来るんですけど、タイピングが間に合わないんですね。 だから誤字脱字の校正はしていませんので、突っ込みはご容赦程、夜露死苦。