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435明けましておめでとうございます。
返信しなければいけないと思いながら,そのままになってしまってすみませ
ん。
さすがにお正月はゆっくりした時間をすごしておりますので,書きたいと思
います。
さて,その後なのですが,
私に意見をした 件の生徒は,努めて私の打点よりも早めに叩くようにして
くれました。
この生徒は,自分の意見は主張するけれども,決して,指導に従わないとい
うタイプの生徒ではないのです。
それで万事解決かというと,残念ながらそうでもなかったのです。
過剰反応というか,その生徒はその後かえって「突っ込みすぎ」になってし
まい,
しかも その突っ込みの程度が不安定で,それを落ち着けるのに苦慮しまし
た。
(彼女としても実際,すこしムキになっていた面もないとは言えないと
思いますが,
私の言うことを努めて真剣に解釈し,受け入れようとしてくれていた
ことは確かです。)
私もその後は少し対応を考え,直接的に「早すぎる」とは,なるべく言わ
ないようにしました。
(全然言わなかったかは自信ありませんが。)
練習の鬼さんがアドヴァイスしてくださった中で,すぐにもできそうだった
のは「録音を聴かせる」ことです。
幸い練習場には録音再生の設備を整えてあり,
パソコンを使用して,たった今の録音をおうむ返しに聴かせることができま
す。
そんなことをしながら全体的にタイミングを整えていきました。
その先は,私自身の欠陥というか,音楽家としての基礎訓練不足によるもの
が大きいのですが,
どうやら私は,「演奏が生き生きしない」と感じると,ことさらテンポを急
がせようとする悪癖があるらしいのです。
もちろんそれはずいぶん前から自覚していて,
常に抑制をかけたり,メトロノームで常に確認したりしているつもりなので
すが,
ここ一番というときに,ときどき「ヤッて」しまいます。
今回の曲でも,その意味で非常に「危ない」箇所があったのですが,やはり
うまくいきませんでした。
4分の3拍子で4小節間かけて,四分音符=
112 から 四分音符=
160 まで
accelerandoする所です。
私はこのaccel.というのが非常に苦手で,大抵は速くなりすぎます。
今回も,メトロノームで何度も確認して練習したのですが,本番では,
160に落ち着くはずの1〜2小節間のテンポが,非常に落ち着かない,不安
定なものになってしまいました。
必死で私につけてくれているスネアと,ちょっと冷静でのんびりしたティン
パニとの間に食い違いを生じさせてしまったのです。
もちろんその先数小節すれば,何度も練習してテンポ感を確実に把握してい
る箇所になるので,持ち直すのですが,
このaccel.の部分には,どうにも苦労させられました。
次回もし同様な曲をやる機会があるときには,Midiソフト等で何度もシミュ
レーションし,指揮の練習をしようと思います。
さて,件の生徒,その後,アンサンブルコンテストで,ひとつのグループの
指導的な立場を担いました。
一生懸命練習に取り組み,そして本番。
もちろん本番は私は指揮はせず,練習でもその曲に関してはそんなに指揮を
しなかったのですが,
なんと,その生徒の演奏は,まるで私の悪癖が乗りうつってしまったかのよ
うな「急いだ」テンポになってしまいました。
指導者の責任を痛感した瞬間でした。
>バンド自体のビート感、テンポ感はどうでしょうか。
管楽器にも打楽器にも,奏法上の問題や,よく分からない点はたくさん抱え
ていますが,
管楽器のビート感・テンポ感に関して,私は打楽器ほど神経質になることは
ありません。
打楽器を休ませておいて管楽器だけ練習することもありますが,その時に
は,大抵テンポやビートの問題は感じません。
おそらく私自身が管楽器奏者で,感覚が近いせいなのかもしれません。
打楽器は聴いた感じ,アタックが非常に明確なので,よけいにシビアな要求
をしてしまうのだと思います。
>でも常に「回りより早く」演奏する事なんて可能でしょうか?気持ち悪く
ないでしょうか。
Midiの話をしましたが,私は時々,Midiソフトでリアルタイム打ち込みをす
ることがあります。
その時に毎回気づくのですが,私の指(ピアノ)は,コンピュータ上の正確な
タイミングより常に早めにタッチする癖があります。
(ほんのちょっとですが)
これは,生演奏で長年,人と合わせてきた感覚がそうさせているのだと思っ
ています。
私の楽器はフルートでした(今はほとんどご無沙汰ですが)ので,「遅れ」の
問題はほとんどありませんでしたが,
それでも一瞬の立ち上がりの分,早めに発音する習慣があるようです。
また,コーラスもやっております(これは今でもやってます)が,
今の合唱団に入団した当初は,他のメンバーの反応がとても遅く感じられて
困りました。
指揮どおりに歌おうとすると,必ず私のタイミングだけ前に飛び出してし
まったのです。
今では何とか,周囲の空気感を読んで,合わせられるようにはなりました
が。
このことを正当化するようでなんなのですが,またフルートの話に戻りま
す。
私が所属していた団に,あるとき,中央からプロオケのフルーティスト(お
名前は失念)が遊びに来たことがありました。
私もかなり前のめりのタイミングを取りがちなのですが,
その人は,私の比ではなく,とんでもなく突っ込む人だったのです。
一緒に演奏していると,必ず16部音符一個か二個は飛び出す勢いだったこと
を印象的に思い出します。
(テンポは,良く覚えていませんが,四分音符=120以上はありました。)
きっと,それぞれの団で,タイミングの合わせかたには個性があり,
そのフルーティストにとっては,私が合唱団で思ったのと同じように,皆の
反応がとても遅く感じたと思います。
CDを聴いているときに思うこともあります。
私が持っているマーチのCDの中に,
ハンス・フリース少佐指揮 第11装甲擲弾兵師団軍楽隊の「不滅のドイツ行進
曲名曲集」というものがあります。
また,バーンスタインとニューヨーク・フィルハーモニックの「マーチ名曲
集」というCDもあります。
この2つのCD,とても対照的な演奏をします。
前者のドイツ人による演奏のスネア・ドラムは,とても後寄りで,独特の重
厚な感じを出しているのですが,
もし,これと同じことを私の生徒がやったなら,私は必ず「遅い」と言うと
思います。
バーンスタインのほうは逆に,非常に前のめりのスネア・ドラムが聴かれま
す。スネアが全体をリードしている感じです。
スネアだけに関して言えば,私はこちらのほうが好きです。
ドイツ流とアメリカ流ということなのでしょうが,
私は音楽作品全般に関してはドイツものが好きで,特にアメリカびいきとい
うことはありません。
これらのことから,私自身,かなり前のめりのタイミングを好む傾向がある
ので,
生徒を指導する際に,よく気をつけないと,ともすると
間違った,あるいは場違いな演奏を導き出してしまう可能性もあると思いま
す。
つとめて冷静に,自分を客観的に見て,これからの演奏を作っていきたいと
思います。
また,各楽器の奏法や特性についても,知識はとても少ないですので,また
これからも,
こういう場もお借りして,勉強していきたいと考えております。
今回は,大変お世話になりました。 ありがとうございました。